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仮154)錯覚

グーグルが新メールアプリInboxを発表しました
大量のメールを自動でグルーピングしたり、大事な部分を適宜抜粋して見せてくれたり
                             まるで賢い専属秘書みたいなアプリです
でも、そんなグーグルの技術の粋を集めても直せない
                      むしろこじらせてしまうかもしれない大問題があります
それは他でもない、メールを送る我々人間

「我々は今、これまで以上に多くのメールを受け取っています」
Inboxチームは、プロジェクト発表のブログポストでこう書いています
「重要な情報がメッセージの中に埋もれ、最重要タスクはすき間からこぼれ落ちていきます
                           これがスマートフォンでは特に顕著です」とも
Inboxでは、このネットユーザ共通の悩みを
                   スマートな機能を組み上げることで解決しようとしています
関連するメールをひとつのトピックのスレッドに「バンドル」し
                        おまけにWebから参考情報まで追加してくれます
他のアプリにもあるように、メールにスヌーズ機能も付けてくれます
メールから重要な情報をハイライトして取り出し、いちいち開かなくても見せてくれます

つまりInboxでは、「多すぎてごちゃごちゃ」「埋もれて忘却」「読むのが面倒」という
                                 メール3大課題を解決してくれます
グーグルお得意の機械学習を使って、複雑な問題を解こうとしているんです
もしInboxがGmailのように快適に使えるものなら
             我々のコミュニケーションの仕方がまた変わっていくかもしれません
ただ最大の問題は、ユーザー側は相変わらず賢くないことです
むしろ、Inboxを使うともっと賢くなくなっていくかもしれないんです

「人間という要素」
メールが手段として良いのかどうかは、人によって意見が分かれます
破たんしていると言う人もいれば、これでいいんだと言う人もいます
時代遅れの恐竜だと言う人もいれば、まだ使いこなす余地があると言う人もいます
Inboxの発表は、こんな風にみんながメールをめいめい勝手な考え方で使っていて
         そのせいでより使いにくくなっている現状を裏付けているのかもしれません

インターネットの黎明期には、メールとはシンプルなメタファーでした
リアルな手紙と同じように、住所と本文が書かれているし
                          何より自分で取りに行かなくては読めません
ネットにつないで能動的にメールをチェックすることは
          リアルでいえば家の前の郵便受けまで歩いて取りに行くのと同じことです
インターネットがここまで普及しても、そのスタイルはほとんど変わっていません
でも我々のほとんどは、すごく大事なときほどメールにアクセスできないものです

2012年のマッキンゼーのレポートによると
                  我々は労働時間の約30%をメールのやりとりに使っています
メールはほとんど1秒ごとに、ときにはもっと頻繁にやってきて
            オンラインで何らかのアクションをするとほぼ必ずメールが生成されます
アマゾンでトイレットペーパーを買ったり、誰かがツイートをお気に入りにしたり
ヨーロッパの通信社が自分と同姓同名の人について言及したり
              おばあちゃんがジョークを送ってきたりするたびにメールが届きます
我々は誰もがあまねくつながっていて、それにもう慣れっこになっています
もう逃げ道がないことを知っているから、あらゆるメールに繰り返しオプトインしてしまうんです

「グーグルによるメールのエチケット」
こうしたメールの氾濫には、それをとりまくエチケットの喪失がもれなく付いてきます
メールをもらえばもらうほど、自分からの返信は少なくなります
みんなお互いメールに埋もれているのがわかっているから
                           返信がなくてもまあいいやとなってしまいます
我々は重要なメールから目をそらし
               気づかないうちに重要じゃないメールに埋もれさせてしまうんです
〆切のあるメッセージが、ショッピングサイトのプロモーションメールの下で迷子になるんです
仕事を1日休みでもすると、雪崩を打つメールから大事な何通かを掘り出すのに懸命となるか
    大事なことは誰かがフォローしてくれることを願って投げ出してしまうかしかありません

でもここには、メール受信側だけでなくく送信側の問題もあります
いちいちメールしなくても、直接話すかFacebookグループを使うか、チャットでも
   Yoでもいいんですが、他の手段のほうが適しているのに惰性でメールしていたりします
我々には他のコミュニケーション手段が無数にあって
                      多くは特定のシチュエーションに向けて作られています
でもメールは汎用的に使えるので、我々はつい今日も120件くらいつながった
               飲み会通知メールのスレッドにとりあえず全返信してしまうんです

メールを賢く使うには、簡単にできる方法がすでにたくさんあります
たとえば一言で済むメールなら件名だけで要件を伝え、その最後に
       「EOM」(End of Messageの略)と入れればGmailから
                             「本文が空ですよ」というアラートも出ません
他にもいろんな拡張とかTipsがあります
メールは、レシートとか写真とかちょっとしたチャットのやりとりとかを保存しておく
                               一種のクラウドとしても使いやすいです
いろんな技があり、いろんな使い道がある利点は欠点とも裏腹ですが
                     きちんと使いさえすれば、メールはやはり強力な道具です

「賢い機械、でも人間は?」
Inboxは、そんなメールの汎用性ゆえの問題点をクレバーな見せ方でカバーしようとしています
メールを開かなくてもその中身がわかるように表示され、関連するメッセージは
                  きれいにまとめあげられ、スパムももちろん自動で分類されます
Inboxは多くの人が採用したいであろう素敵なアシスタントですが
             それはあくまでメールの荒海を乗り切ろうとする救命ボートに過ぎません
メールの波そのものを止めてはくれないんです
Inboxが普及したら、大量のノイズや賢いアルゴリズムでメッセージが阻まれないように
               いろんなお店とか企業、もしかしたら友だちや恋人や家族まで
                  ますます必死にメールを送るようになってしまうかもしれません
でも、もし今美しく、無料で、きちんと機能するメールツールを作れる誰かがいるとすれば
                                           それはグーグルです
Gmailはちゃんとしたスパムフィルターを最初に作りあげたメールサービスだし
                                  Google Nowとの連携も鮮やかです
Inboxはそれと同じくらいか、もっと良いものになると期待できます

でもInboxは、問題の根幹を直してはくれません
メールは引き続き、良くも悪くもただのメールです
Inboxは、愚かな人間がそれを使いすぎたり、無視したり、依存したり
                      注意散漫の言い訳にしたりするのを止めてはくれしません
そうした問題はどんなアルゴリズムにも直せない、人間自身の問題

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ネット検索は「自分は賢い」と錯覚させる
ネットによる情報検索は、実際以上に自分が賢いと錯覚させる
米国の研究者によるこんな研究結果が米心理学会の専門誌に掲載された
検索ユーザーはネット上の知識と自分の知識を混同してしまう傾向があり
           研究者は「正確な知識を身につけるのは難しいことだが
                              ネットはそれをさらに困難にしている」という
ある実験では、対象者をネット検索を使ってもいいグループとそうではないグループに分け
                「ジッパーはどういう仕組み?」といった4つの質問に答えてもらった
その上で、4つの質問とは無関係な別の質問
               (「曇りの夜はなぜ暖かい?」など)を示したところ
ネット検索を使ってもいいグループは、そうではないグループに比べ
               「自分はその質問に答える能力がある」と考える傾向にあったという
検索を使えるグループは、正確な回答が見つからないようなとても難しい質問や
 Googleのフィルターによって回答が見つからないようになっている質問を
               検索した場合でさえ自分の知識は十分にあると感じる傾向にあった
「“検索モード”時の認知作用はとても強力で、検索で何も見つからなかった時でさえ
                    人々は自分を賢く感じているようだ」と研究者は述べている
「質問に答えられないということは、自分がその答えを知らないから、というのは明らかだ
だがインターネットでは、『自分が知っていること』と
            『自分が知っていると思っていること』の線引きがあいまいになってしまう」
スマートフォンの普及で常にネット環境が手元にある現在
                            この問題は深刻化している可能性があるという
また早くからネットに親しんでいる子どもへの影響も懸念されるという
こうした傾向が、多くの利害関係が存在する政治などの分野に持ち込まれると
                                            危険だとも警告する
「決断が大きな結果をもたらすようなケースでは
          自分自身が持つ知識を見分け本当は知らないことについて
          知っているかのうように考えないようにすることが重要になるだろう」としている


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